本ブログは、シリーズ第2弾となります(第1弾はこちら)。
かつての「One-Way Transfers(期限を定めない赴任)」は、いわゆる「片道切符」としての異動、つまり「転籍」として使用されていたものでしたが、昨今様子が変わりつつあります。コスト削減への取り組み、リモートワークとの併用、駐在員ニーズへの柔軟な対応のために、今この規程の使い道が見直されています。このブログシリーズでは、今後の海外人事においてますます「使える」規程となるであろう、このOne-Way Transfersをより深く掘り下げていきます。
海外駐在規程とOne-Way Transfersの比較
海外人事が現在どのようにOne-Way Transfersを戦略的に活用しているかを理解する前に、One-Way Transfersとはそもそも何か、そして、この規程が歴史的にどのように使われているかを理解しておきましょう。
1)一般的な海外赴任規程での前提条件
期間の定め(1~5年間)がある
日本から赴任をし、日本に帰任をする
日本と物価差や為替変動がある国に行く
物価差を考慮して(購買力補償)、給与算出をする
2)One-Way Transfersでの前提条件
期間の定めはない
赴任をしたまま現地に居続ける可能性がある(数年後に日本に帰任する前提ではない)
日本との物価差を考慮した給与形態・手当ではない
一般的な海外赴任規程との違いは上記のとおりです。One-Way Transfersの場合は、日本への帰任を前提としていないため、一般的な駐在と異なり日本との物価差や生活環境の差を考慮した給与形態にする必要がありません。そのため企業にとって、One-Way Transfersの異動とは伝統的に「転籍」「ローカル化」として活用されてきました。日本から海外への異動のためのサポート(海外引越、VISA航空券、赴任前健診など)自体は通常の一般的な駐在員同様にサポートしますが、帰国を前提とする駐在者ならではの手当(例えば子女教育費、住宅、購買力補償、税制優遇など)は限定的あるいはサポートしないことが一般的です。
帰任を前提としないことで生じるメリット
欧米では近年、このOne-Way Transfersの用途が広がっているようです。
1)企業側のメリット
税制優遇や生活費補助をはじめとする各種手当額を抑えることのできるOne-Way Transfersは、企業にとってはコスト面でメリットがあります。その駐在員のHOME国(母国)の生活水準の維持を一切保証することなく、人材異動させることをできます。また、第三国に横異動をする際も、今いる国と新たな国の報酬体系や生活環境レベルが同等の場合、そのままスライドすることが出来るという利点もあります。
2)駐在員側のメリット
海外駐在員として選定されるにはまだ本国での経験も実績もないけど、海外で経験を積みたい。そう考えている若手社員にとってはチャンスです。企業側に大きなコスト面の負担を掛けさせずに異動が出来る身軽さから、企業側は国内転勤のような感覚で、海外拠点に送り出してくれるでしょう。本国に戻ることを前提としていないので、海外の拠点を渡り歩きたい意欲的なグローバル人材にも適しています。
さらに、業界特有の要因もあるように見えます。例えば、IT企業では、若手のうちから国際的な経験が求められるケースが多いです。その場合、報酬の長期的なインセンティブから得られることが多いです。あるいは自社株を多く受け取ることもあるようです。
駐在員のニーズやライフスタイルはますますと多様化します。このように、どのような形で会社に貢献ができ、会社からどのようなリターンを得られるのかを駐在員本人が考慮したうえで、自らの意思で赴任スタイルを決定する。柔軟な対応策の1つの選択肢として、One-Way Transfersが今後ますますと活きてくるでしょう。
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■第2弾:規程の新たな使い道を模索する
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元記事(AIRINC社の情報サイト AIRSHARE)※英語表記
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